副業・兼業時代の労災保険|複数就業者への新しい適用ルールを解説

副業・兼業の広がりにより、労災保険のルールも変化しました。

複数の勤務先で働く方への適用範囲や給付の仕組み、企業が見直すべきポイントをわかりやすく解説します。

目次

副業・兼業者にも労災保険が適用される時代に

「副業・兼業の推進」が国の方針として掲げられ、複数の勤務先を持つ働き方が一般的になってきました。

こうした流れを受けて、2020年(令和2年)の法改正により副業・兼業者も労災保険の対象となりました。

つまり、本業でも副業でも業務上・通勤中の災害が発生すれば労災保険が使えるということです。

これは、働く人にとって大きな安心材料となっています。

どの勤務先の労災が適用されるのか?

副業・兼業者が労災に遭った場合、基本的には災害が発生した勤務先の労災保険が適用されます。

  • 主たる勤務先で事故が発生 → 主たる勤務先の労災
  • 副業先で事故が発生 → 副業先の労災

労災保険は「どこで発生したか」で判断されるため、複数の勤務先を持つ人は、各職場での安全管理も意識する必要があります。

労災給付はすべての賃金を合算して計算

従来は、副業先での事故なら「副業の賃金のみ」が給付の対象でしたが、現在はすべての勤務先の賃金を合算して補償額を算出します。

たとえば、

  • 本業:月20万円
  • 副業:月10万円

の場合、労災給付の基準は合計30万円として計算されます

この制度改正により、副業・兼業者も本来の生活水準に見合った補償を受けられるようになりました。

労災の対象は「雇用契約を結んでいる労働者」

注意が必要なのは、労災保険が「雇用契約を結んでいる労働者」に限られるという点です。

個人事業主や業務委託契約者は原則として対象外となります。

ただし、「一人親方特別加入制度」を利用すれば、フリーランスや個人事業主でも労災保険に加入できます。

医療・介護業界で訪問スタッフを個人委託している場合などは、特に確認が必要です

企業が見直すべきポイント

副業・兼業者が増える中で、企業側には次のような対応が求められます。

  • 副業・兼業に関する就業規則の明確化
  • 労働時間の通算・管理方法の見直し
  • 安全衛生管理・労災対応マニュアルの整備
  • 健康確保措置(勤務間インターバルなど)の導入検討

特に、就業規則に「副業を許可する条件」や「労災発生時の連携方法」を明記しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

まとめ:副業・兼業を前提にしたルールづくりを

副業・兼業者にも労災保険が適用されるようになったことで、働き方の自由度は高まりました。

一方で、企業には安全管理・労務管理の複雑化という課題も生じています。

社労士としては、こうした新しい制度に対応できるよう、就業規則の整備や労災リスク管理のアドバイスを提供していくことが重要です。

副業を前提とした「新しい働き方時代」のルールづくりを一緒に進めていきましょう。

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