通勤手当は非課税なのに社会保険の対象?意外と知らない取扱いの違い

通勤手当は税法上は非課税でも、社会保険では報酬として扱われます。非課税=保険料対象外ではない理由を社労士が解説。

目次

通勤手当は「非課税=保険料対象外」ではない

従業員に支給する通勤手当。

多くの企業で毎月の給与と一緒に支給されていますが、実は所得税と社会保険で取扱いが異なることをご存じでしょうか?

税務上は非課税なのに、社会保険料の計算には含まれる。
この違いを理解せずに処理してしまうと、給与計算ミスや保険料誤納につながるおそれがあります。

所得税法上は「一定額まで非課税」

所得税法では、通勤手当は一定の限度額まで非課税とされています。

たとえば、公共交通機関を利用する場合は月15万円まで非課税です。

自動車通勤や自転車通勤の場合も、距離に応じた非課税限度額が定められています。

つまり、通常の範囲で支給されている通勤手当は、給与明細上で「非課税通勤費」として扱われるケースが一般的です。

社会保険では「報酬」として扱われる

一方で、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の計算では、通勤手当は報酬に含まれるとされています。

そのため、非課税かどうかにかかわらず、標準報酬月額の算定対象となります。

たとえば、月給25万円+通勤手当1万円の従業員の場合、

社会保険上の報酬は「26万円」として扱われます。

このように、通勤手当を支給することで保険料が上がる可能性もあるのです。

なぜ違うのか?税法と社保法の考え方の違い

税法は「課税の公平性」を重視しており、通勤費を実費補填として非課税にしています。

一方、社会保険制度は「経済的給付としての収入」を基準にしており、

通勤手当も定期的に支払われる報酬の一部とみなしています。

つまり、「税法上の非課税」と「社会保険上の報酬」は制度目的が異なるのです。

実務上の注意点

給与ソフトでは自動処理されることも多いですが、以下のようなケースでは特に注意が必要です。

  • 通勤手当の支給方法を変更した場合(定額→実費精算など)
  • パート・アルバイトへの支給
  • 複数事業所勤務で経路が重複する場合

「非課税だから社会保険に入れなくてよい」と判断してしまうと、

後日、算定基礎届や月額変更届で誤りが発覚する可能性があります。

就業規則と賃金規程の整備も忘れずに

通勤手当の支給条件や上限額、支給方法は就業規則や賃金規程に明確に記載しておくことが重要です。

税務・社会保険の両面で整合性を取ることで、従業員とのトラブル防止にもつながります。

まとめ

通勤手当は、所得税では非課税でも、社会保険では報酬として扱われます。

「非課税=保険料対象外」と思い込んでしまうと、思わぬ保険料の誤りにつながることも。

制度の目的と取扱いの違いを正しく理解し、税務と社会保険の両面から見直すことが大切です。

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