医療・介護事業所が陥りやすい労務トラブルと防止策

医療・介護の現場は「人が資本」。24時間365日体制や急な人員交代など、他業種にはない特性を持つため、労務トラブルが発生しやすい環境にあります。ここでは現場でよく見られる典型的なトラブルと、その防止策を解説します。
1. 長時間労働と未払い残業
夜勤やオンコール対応など不規則勤務が多く、残業管理が曖昧になりがちです。
- リスク:未払い残業が判明すると、過去2~3年分の割増賃金を遡って請求される可能性があります。
- 対策:労働時間を正確に把握するシステム導入、36協定の適正化、変形労働時間制の正しい運用が重要です。
2. 有給休暇の未取得
慢性的な人手不足から「忙しくて取れない」状況が続き、年5日の取得義務を守れない事業所も少なくありません。
- リスク:労働基準法違反として罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象。
- 対策:計画的付与制度を活用し、シフトに有給を組み込む仕組みを構築しましょう。
3. ハラスメント(パワハラ・セクハラ・カスハラ)
患者・利用者や家族からのカスタマーハラスメントも深刻化しています。
- リスク:放置すると職員の離職・メンタル不調、訴訟に発展する恐れ。
- 対策:ハラスメント防止規程を明文化し、相談窓口の設置や管理職研修を実施することが必須です。
4. 雇用契約書・就業規則の不備
「口頭での採用」「古い就業規則のまま」といったケースは珍しくありません。
- リスク:契約条件を巡るトラブル、労使紛争、労働局への申告。
- 対策:雇用契約書の交付、職種や勤務形態に応じた就業規則の定期的な見直しが必要です。
社労士ができる具体的サポート
薬剤師として現場を知る社労士だからこそ、以下のような支援が可能です。
- 就業規則・賃金規程の作成・改定
夜勤や変形労働時間制、オンコール勤務など医療・介護特有の勤務形態に対応した規程を整備。 - 労働時間・シフト管理体制の構築
勤怠システム導入や36協定見直し、変形労働時間制の正しい運用を支援。 - 助成金活用サポート
働き方改革推進支援助成金、キャリアアップ助成金など、職場改善と費用補填を両立。 - ハラスメント対策研修・相談窓口設置
管理職研修、社内相談窓口の体制づくり、カスハラ対応マニュアルの策定。
労務トラブルは「起きてから対応」では遅く、訴訟や行政指導が経営に大きな打撃を与えます。
職員が安心して働ける環境づくりは、採用力・定着率を高め、結果として事業の安定と地域医療・介護の質向上につながります。医療・介護事業所ならではの現場事情を理解した社労士が、予防と改善の両面からサポートします。