就業規則の変更で「意見聴取なし」は違法│書類送検のニュースから学ぶポイント

最近、就業規則を変更する際に従業員の意見を聴かずに届け出た企業が、労働基準法違反で書類送検されたというニュースがありました。
「うちの会社でも就業規則を見直したいけれど、細かい手続きまでは分からない」という経営者の方も多いのではないでしょうか。
実は、就業規則を作成・変更する際には、労働基準法第90条により、従業員の代表者から意見を聴くことが義務付けられています。
これは「同意を得る」までは必要ありませんが、「意見を聴いた」という事実と、その意見書を労働基準監督署へ添付して届け出ることが求められます。
つまり、内容がいくら正しくても、手続を省略すれば法違反となるのです。今回の書類送検は、まさにこの「形式的な手続き」を軽視したことが問題とされました。
労働者代表の選出が適正に行われていない場合や、意見書を形だけで提出している場合も同様に、後から無効と判断されるおそれがあります。
近年は、働き方改革関連法の改正や、育児・介護休業制度、兼業・副業制度など、法改正に合わせて就業規則を見直す機会が増えています。
そのたびに意見聴取と届出を正しく行う必要がありますが、実務上は「前の代表者のまま」「いつの意見書か不明」といったケースも少なくありません。
また、従業員への説明を十分に行わず変更を進めると、内容そのものに不満が出たり、トラブルの火種になることもあります。
就業規則の変更は、単なる届出業務ではなく、「会社のルールを再設計する経営判断」として捉えることが大切です。
ポイントは次の3つです。
- 労働者代表を適正に選出すること
部署や役職に偏りがないよう、全従業員から公正に選ぶ必要があります。 - 変更理由や背景を丁寧に説明すること
社員の理解を得ながら進めることで、実際の運用もスムーズになります。 - 改定後は速やかに周知すること
就業規則は、従業員がいつでも確認できる状態にしておく義務があります。
就業規則は「会社を守るためのルール」であると同時に、「従業員が安心して働くための約束事」でもあります。
今回のような書類送検は決して他人事ではありません。形式を軽視せず、内容と手続きをセットで見直すことが、結果的にトラブルを防ぐ最善の方法です。
就業規則の変更をお考えの方は、専門家に相談のうえで進めることをおすすめします。
小さな見落としが、大きなリスクになることを防ぐために。
